私がかつて大企業と呼ばれる会社に勤めていたころ、日中のほとんどの時間を会議に奔走していた。 1つの会議に費やす時間は平均で二時間。ただ、会議の出席者が全員揃うのに30分を要し、延々雑談をし、結論は次回の会議日程を決めただけという会議も中にはあったと記憶している。
一方、米国に駐在していたときの会議は、まったく別物。まず、会議主催者と会議出席者という構図がはっきりしていた。
つまり、「司会進行する」という役割が明確なのである。司会進行者はシナリオを持って会議を進行していく。その過程、結論の導き出しについて責任を 持っていることを自覚している。一方、会議出席者は司会進行者を助けるために自分の意見を臆せず言う。この手の会議は、基本的に平均1時間程度で終え、 即、解散するのが一般的である。ただし、他の話題など話をしたい人は会議室に残ったり、別に座席の周りや部屋に入って、雑談のような打ち合わせを行う場合 が多い。一見、突発的に思えるこのような打ち合わせだが、打ち合わせを行う必要が発生すると必要な人同士がパッと集まり、即決して実行するという合理性と スピードの速さには、はっきりいって舌を巻いた。
我々のような小企業も、必要な時に必要な人だけ集めて会議を行い、意思決定を行っていくところは、このアメリカでの経験に似たところがある。
居酒屋でサラリーマン同士の話に耳を傾けると、”もう仕事が忙しくていつも帰りが遅い”とか”とにかく忙しくて大変だよ”などと話をしている人が多 いが、本当に意味のある仕事が出来ているかを自分に問うて欲しい。もちろん1分1秒も無駄にできない大変な仕事を抱えている人もいるであろう。だが、”忙 しい”と言っている実態は、日中は無駄な会議で過ごし、本当の意味での仕事は夕方から深夜にかけてという場合が少なくないだろうか。
さて、会議のあり方について、米国での経験や我々のような小企業での実態と比較して大企業の悪い点を述べたが、何も全てが悪いというわけではない。
企業文化や会議の性質などにもよるが、一般的に、会議主催者は議事録あるいは会議録を作成し、会議終了後直ちに(遅くても数日内に)会議出席者に議 事録を送付する。この議事録の作成の仕方ををきちんと教えてくれるのは、大企業の良い点ではないかと思う。議事録なんてと思う人もいるだろうが、実はとて も重要な文書なのだ。議事録を書かなかったがために、あとで言った言わないで問題になったケースは良く聞くことである。
また、この議事録を作成するという仕事は、実は教育的な観点からもとても重要な作業である。特に、新入社員にとっては議事録を作成することによって 「仕事を覚える」ことができる。会議の進行を書き記すことによって自分がその仕事の何を理解し、何が理解できていないかを知ることができるチャンスなので ある。
若い人の多いベンチャ企業には、このような習慣が無い、というかそういうことを知らないところさえある。だから良くないというつもりはないが、ここ でのポイントは社会人としての基本的な教育がなされているというかどうかという点である。大企業は長年にわたって延々と培ってきたものを体系的に教えてく れるというシステムができあがっている。社会人として水準以上の教育を受けられるという点は、大企業のメリットといえるのではないだろうか。
2004.07.08 深田 優